【d!】重い思いの行きつく先は【gr】 (ページ9)

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一章:「ある男の春と、幼馴染の修羅」ページ9

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私と幼馴染のグルッペン、基「黒霧燈真」が通うこととなったマンモス校は、「我兌大学」と呼ばれるなんともまあ不思議な名前の大学である。
春はあけぼの、やうやう白くーーなんていうのも束の間、つつがなく入学式も終え、大学では授業を受け、家ではグルッペンと他愛ない話をすることが続いている私は、なんということもない日々を過ごしている。
燈真、いや心の中ではグルッペンと呼ぶことにするが、グルッペンは史学科で私は日本文学科という、なんとも言えない分かれ道を辿っていた。グルッペンは政治学科に行くかと思っていたが、当てが外れたと話すと「政治経済についてはもう頭に入っている」とスマホから株取引を見せつけて高笑いまでしてきた。くそ、才能マンめ。
閑話休題、ともかく日本文学科に進んだ私は、特に筒がなく日々を過ごしていた。

多分、この瞬間まで。

「かんぱーい！」
なんでこんなところにいるのだろう。
ガヤガヤとうるさいファミレス、ウーロンハイではなく烏龍茶を持って音頭をとる主催や、おそらく同じ学科なのだろう人々や違う学科のメンバーを前にしてそんなことを思った。私を誘い出した相手の方をちらりと見ると、ごめんごめんとでもいうように笑っている。その様子だと、特に悪いとも思っていないのだろう。愛想笑いをする気にもなれず、氷の入ったグラスを鳴らした。からん、とぶつかる音がする。
こんなところにいるのに、特に大した理由はない。同じ学科でそれなりに話す女子大生に「仲良くなりたいから一緒に来て」なんて言われて舞い上がったのがバカだったのだ。というか女子校のぬるま湯に使っていた私が、そんな誘い文句の裏側を覗き込めるわけがなかったのだけど。
蓋を開けてみれば男女が均一に5人ずつ。それを問い詰めればあらまぁ大変！これは噂の合コン、という。

(場違いなところに来ちゃったなぁ)

別に恋愛に興味がないわけではない。
ないけれど、こうして騙して連れてきたり、「まあまあ良いじゃん！Aさんも恋愛したいでしょ？」と人の心を勝手に決めつけるのって、正直どうなのと思う。そこまでして男の人と連れ合いになりたいだろうか。アイシャドウを塗りたくった目がギラギラしていて、赤い口紅が薄暗いファミレスに光るようで、怖い。男の方も、餌を探す狼のように爛々と目を光らせている。

「すごいなぁ」

素直にそう思った。出会ったばかりの相手に運命を感じるなど、私には真似できないし。

「何がすごいん？」