███████ ページ25
部屋に入った。けれど、私を出迎えたなかむは、暗い顔のまま「待ってたよ、」と小さく笑った。最初の内によく聞いた、どうして来たの？とか来るなって言ったよね？なんてセリフが飛んでくることはなくて多少の違和感を覚えながらも、やっとなかむは私を受け入れてくれたんだな、とただ安堵に包まれた。
何処に行きたい？何をしたい？、なんていつものように飛んでくる質問も今度はなくて、なかむはただパチッと指を鳴らし、私の腕を優しく引いた。そのまま彼の腕の中に収まった瞬間、世界が万華鏡のようにぐるりと回って、辺り一面が暗くなった。同時に身体を傾けてしまいそうなほどの風が吹き、なかむの服をぎゅっと掴んで体勢を整えた。掴むと共に、後ろに回された腕の力も強くなって更に彼と密着する。
彼の肩越しから見える景色は、暗闇に眩いほどの光の数々……夜景だった。足元を見てみると、一歩足を外してしまえば真っ逆さまに夜景へと落っこちてしまうようなギリギリの場所で、思わずか細い声を上げて彼に力いっぱい抱きついた。苦しいって、なんて笑い混じりの声が耳の傍から聞こえた。
なかむに抱きつきながら、辺りを見回す。周りの建物よりも一際高い建物の屋上、そこに私となかむは抱きしめ合うようにして立っていた。人がアリのように小さくに見える、なんてことはなく、むしろ人の姿さえ見える事が出来なかった。ビルの窓から漏れる光が集まって、夜の闇を様々な色の光で照らしている。
『……何で此処に連れてきたの？』
なかむの方を見ると、彼は物憂げな表情を浮かべながら私の方を見つめていた。その瞳に縫い付けられてしまったように、一度合ってしまえば離す事が出来なくなってしまって、彼の瞳の中で揺れる空色をただ何も言わず眺め続けた。
「……Aが来たいって、言ってるような気がした。」
そう言う割に、その声には自信が無いように思える。彼の言葉に否定も肯定も出来ないままそっか、なんて曖昧な返事をした。それは何故か、答えは簡単だ。まさに私が行きたいと乞い願っていた場所だったのだ。私が思っている事を見透かされる事は今に始まった事じゃないから不思議に思うことはないけれど、それを肯定してしまえば、その奥に潜んでいる真意でさえも彼に何もかも読み取られてしまうような気がした。
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神崎いのり(プロフ) - まかだみあさん» コメントありがとうございます。こうやって伝えて頂けるだけでとても嬉しいです、素敵なお言葉本当にありがとうございます。無理は禁物ですよ？改めて、最後までお付き合いくださりありがとうございました！ (5月13日 20時) (
レス) id: 8fac357c0d (このIDを非表示/違反報告)
まかだみあ - コメント失礼します、素敵なお話ありがとうございました！最後で少し泣いてしまいました、！言葉にするのが難しいのですが、幸せと感動と優しさですごい感情になっています、笑心の栄養剤です、ありがとうございました。もう少し生きてみようと思えました。 (5月11日 14時) (レス) id: f1ef938d5f (このIDを非表示/違反報告)
神崎いのり(プロフ) - あおさん» コメントありがとうございます！お褒めの言葉とっても嬉しいです✨これからもちまちまとやっていきますので、是非空き時間のお供にでもしてやってください。読んで頂き本当にありがとうございました🙇 (5月4日 9時) (レス) id: 8fac357c0d (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 初コメ失礼します。神崎いのりさんの作品は全て見たんですけど、毎回感動してしまったり、文章の素敵な表現にドキドキしたり、とても楽しく見させていただいてます。これからの作品も楽しみにしてます！素敵な作品をありがとうございました！ (5月1日 23時) (レス) id: 917f0d4c8d (このIDを非表示/違反報告)
神崎いのり(プロフ) - しらたま。さん» コメントありがとうございます！私には勿体ないくらいの素敵なお褒めの言葉ありがとうございます😭こちらこそ、最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました。 (4月28日 14時) (レス) id: 8fac357c0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神崎いのり | 作成日時：2024年4月14日 15時
