【d!】あああああ【短編集】 (ページ30)

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『ま、待ってください。あれ、は。ヒトじゃないと思います...！第一あんな服来て出歩くなんて。まさにゾンビに狙ってくれなんて言っているのと同義ですよ！』

「距離はあるから、彼奴の近くの床に撃つわ。
＿＿ゾンビ共が音に寄ってくると思うけど、それで反応をちょっと見てみるか。」

揺れる焦茶の少し長い髪。服こそ正装であるが、それこそ緑のパーカーを着ればゾムに似る気がする。面影がちらつくから威嚇射撃に少し躊躇う。当然止める事が出来ず様子を見ていれば、

＿＿花婿の首がきりきりと此方、撃ち手の方を捉える。その、特徴的な翠の目で。
そうして人間離れした美しい微笑は私に、酷い憎悪は隣の彼に手向ける。

「...ひとえに愛の力やって...！」

「Aはやっぱりおれのはなよめさまやから、」

うわ言を連むナニカ。あの街に巣食うゾンビ達とは違うナニカ。＿＿尋常ではない雰囲気をいち早く感じ取ったのだろう。二度目の銃声がモール内に響く。
...あの人に似ているから、思わず見たくなくて。目を塞げばリムが床に転がる音が良く聞こえる。人間は暗くなると聴覚に敏感になるとは良く言う。

「＿＿外した。」

次に目を開いたのはその声によってだった。

「...おれのはなよめさま。なんでおれのなのに、違う人と二人でいるん？なんで一人やないの...？」

「Aはおれとかぞくになるんやもん。...ソイツはなれへんよ...？」

一階から見上げるソレに銃創は無かった。危機的状況の筈なのに、何故か『良かった。』と思ってしまうほどに私はヤツにゾムを重ねていた。＿＿本人なのかもしれない。心のどこかでそう思ってしまうのだ。

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